私花集

さだまさし( 佐田雅志 ) 私花集歌詞
1.最后の頁(ぺーじ)

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

慣れない煙草にむせたと
涙を胡麻化し乍ら
ちゃんとお別れが云えるなんて
君は大人になったね

不思議なもんだね二人
登り坂はゆっくりで
下りる速さときたらまるで
ジェット・コースターみたいだ

※君が「サヨナラ」とマッチの軸で
テーブルに書いたらくがき
僕がはじから火をともせば
ホラ「サヨナラ」が燃えてきれいだ※

前から判ってた事だと
君はそんな振りをして
冷静に過ごそうとしてる
最后の思いやり

不思議なもんだね二人
もう何年か過ぎたら
全く違うレールをきっと
走っているのだろうね

もしも僕達のこのあらすじが
鉛筆書きだったなら
もう一度位ならおそらく
ホラ書き直せたかも知れない

(※くり返し)


2.SUNDAY PARK

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

公園のベンチで僕は
過ぎた愛の哀しさを数える
ひとりそんな午後
子供はブランコの順番 争い
所詮 僕の愛も
それと同じ重みかしら

別れた人の横顔を
思い出せば いつも涙顔
SUNDAY PARK

年老いた人が 菩提樹の葉陰で
居眠りしながら 涙ぐむ
足元に新聞紙
子供はブランコに飽きて
次の遊びに 駆け出したあとには
鳩が舞い立つ

晴れた午後には こんな密かな
哀しみ方があっても いいだろう
SUNDAY PARK
SUNDAY PARK
SUNDAY PARK


3.檸檬

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

或の日湯島聖堂の白い石の階段に腰かけて
君は陽溜まりの中へ盗んだ檸檬細い手でかざす
それを暫くみつめた後で
きれいねと云った後で齧る
指のすきまから蒼い空に
金糸雀色の風が舞う

喰べかけの檸檬聖橋から放る
快速電車の赤い色がそれとすれ違う
川面に波紋の拡がり数えたあと
小さな溜息混じりに振り返り
捨て去る時には こうして出来るだけ
遠くへ投げ上げるものよ

君はスクランブル交差点斜めに渡り
乍ら不意に涙ぐんで
まるでこの町は青春達の姥捨山みたいだという
ねェほらそこにもここにも
かつて使い棄てられた愛が落ちてる
時の流れという名の鳩が舞い下りて
それをついばんでいる

喰べかけの夢を聖橋 から放る
各駅停車の檸檬色がそれをかみくだく
二人の波紋の拡がり数えたあと
小さな溜息混じりに振り返り
消え去る時には こうしてあっけなく
静かに堕ちてゆくものよ


4.魔法使いの弟子

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

むかしむかしもっとずーっとむかし
とても貧しい若者がいたんだ
この町にね
それがある日お金持の
ひとり娘を ひと目みた時に
恋したんだとさ
でも娘の気をひく何もない
若者は悲しんで
それじゃ 魔法使いになれた
ならば 何でも出来ると思った
とてもエラい修業をして
やがて やっと魔法使いの弟子に
なれたってサ

弟子が教わる ことといえば
箒で空を飛ぶことと 夢をつかまえること
そこで早速娘の家へ
毎晩自分が 主役の夢ばかり
せっせと届けた
いつの間にか娘は
若者にしらずしらず恋をした
それで魔法使いの仲人で
めでたくかけおちしちゃった
つまりその娘がママだよ
だからパパは今でも箒くらい
飛ばすのは簡単サ


5.フェリー埠頭

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

私フェリーにしたの
だって飛行機も汽車も
涙乾かすには 短か過ぎるでしょう
でもさよならは まだ
言わずにいいでしょう
向うのステーション・ホテルから
電話をするから
最後の助手席で海岸通りを走る
不思議ね 思い出にすれば 皆 優しいのに
水に揺れる イルミネーション
綴れ織りの道を
あなたの横顔が
くぐり抜けて行く

ふたり過ごした日々に
ありがとう添える程
おとなになれないけど
悔やみはしないわ
ちぎれた紙テープが
思い出の数だけ
あなたに手を振るように
水の中で揺れるわ
私の心配はいらない
片想いの方が
あなたの分まで
ふたり分 愛せるから
私フェリーにしたの
だって飛行機も汽車も
涙乾かすには
短か過ぎるでしょう


6.天文学者になればよかった

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

君がここから出て行く訳は
幸せ描いた僕の設計ミスさ
図面通りにゃいかねえもんだな
こんなに早く すきま風吹くなんて

夢囲むガレージ セントラルヒーティングの愛
なんでもそろえたのに
君が出てゆくドアがはずれる
窓は落ちるトイレも壊れてしまう
君という蝶つがいが
ひとつはずれただけで
想い出の垣根も倒れた

これほど設計の才能がないなら
天文学者をめざせばよかったよ
バミューダの謎や
ピラミッド・パワーに
未確認飛行物体との接近遭遇等々(コンタクト)
それから 新しいすい星に
自分の名を付けてしまおう
そうさそれが僕に 一番お似合の
すてきな仕事じゃないか
星の数かぞえて
夢の数かぞえて
恋人はそう アンドロメダ

幸せの設計技師になれずに
傷ついた若者の肩を抱いて
したり顔でやさしく言ってやるんだよ
きみーい それでも 地球は廻っている


7.案山子

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

元気でいるか 街には慣れたか
友達出来たか 寂しかないか お金はあるか
今度いつ帰る

城跡から見下せば 蒼く細い河
橋のたもとに 造り酒屋のレンガ煙突
この町を綿菓子に染め抜いた雪が消えれば
お前がここを出てから初めての春

手紙が無理なら 電話でもいい
「金頼む」の一言でもいい
お前の笑顔を待ちわびる
おふくろに聴かせてやってくれ

元気でいるか 街には慣れたか
友達出来たか 寂しかないか お金はあるか
今度いつ帰る

山の麓煙吐いて列車が走る
凩が雑木林を転げ落ちて来る
銀色の毛布つけた田圃にぽつり
置き去られて雪をかぶった 案山子がひとり

お前も都会の雪景色の中で
丁度 あの案山子の様に
寂しい思いしてはいないか
体をこわしてはいないか

手紙が無理なら 電話でもいい
「金頼む」の一言でもいい
お前の笑顔を待ちわびる
おふくろに聴かせてやってくれ

元気でいるか 街には慣れたか
友達出来たか 寂しかないか お金はあるか
今度いつ帰る

寂しかないか お金はあるか
今度いつ帰る


8.秋桜

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

淡紅の秋桜が秋の日の
何気ない陽溜まりに揺れている
此頃 涙脆くなった母が
庭先でひとつ咳をする
縁側でアルバムを開いては
私の幼い日の思い出を
何度も同じ話くりかえす
ひとりごとみたいに 小さな声で

こんな小春日和の穏やかな日は
あなたの優しさが浸みて来る
明日嫁ぐ私に 苦労はしても
笑い話に時が変えるよ
心配いらないと 笑った

あれこれと思い出をたどったら
いつの日もひとりではなかったと
今更乍ら わがままな私に
唇かんでいます
明日への荷造りに手を借りて
しばらくは楽し気にいたけれど
突然涙こぼし 元気でと
何度も 何度も くりかえす母
ありがとうの言葉をかみしめながら
生きてみます 私なりに
こんな小春日和の穏やかな日は
もう少しあなたの
子供でいさせてください


9.加速度

作詞:さだまさし
作曲:渡辺俊幸

別れの電話は雨の日の午後
受話器の向うできみは確かに
雨にうたれ声もたてずに泣いていた
「最後のコインが今落ちたから
今迄のすべてがあと3分ね」って
きみはとぎれがちに 小さくつぶやいた

スローモーションで時が倒れてゆく
言葉さえ塞いで
ごらん愛の素顔は 2つの世界の
間で揺れる シーソーゲーム
喜びと……悲しみと……

最後の電話がコトリと切れて
静かに僕の手に残ったものは
発信音と穏やかな雨のさざめき
途絶える直前の君の優しさは
最後に ピリオド打たなかったこと
まるで悲鳴の様に 言いかけた「それから」って

自分の重みに耐え切れず落ちてゆく
ガラス窓のしずく
あたかも二人の加速度の様に
悲しみを集めて
ほらひとつ またひとつ


10.主人公

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

時には 思い出ゆきの
旅行案内書にまかせ
「あの頃」という名の
駅で下りて「昔通り」を歩く
いつもの喫茶には まだ
時の名残りが少し
地下鉄の 駅の前には
「62番」のバス
鈴懸並木の 古い広場と
学生だらけの街
そういえば あなたの服の
模様さえ覚えてる
あなたの眩しい笑顔と
友達の笑い声に
抱かれて私はいつでも
必ずきらめいていた

「或いは」「もしも」だなんて
あなたは嫌ったけど
時を遡る切符があれば
欲しくなる時がある
あそこの別れ道で選びなおせるならって…
勿論 今の私を悲しむつもりはない
確かに自分で選んだ以上精一杯生きる
そうでなきゃ あなたにとても
とてもはずかしいから
あなたは教えてくれた 小さな物語でも
自分の人生の中では 誰もがみな主人公
時折り思い出の中で
あなたは支えてください
私の人生の中では私が主人公だと


11.檸檬

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

或の日湯島聖堂の白い石の階段に腰かけて
君は陽溜まりの中へ盗んだ檸檬細い手でかざす
それを暫くみつめた後で
きれいねと云った後で齧る
指のすきまから蒼い空に
金糸雀色の風が舞う

喰べかけの檸檬聖橋から放る
快速電車の赤い色がそれとすれ違う
川面に波紋の拡がり数えたあと
小さな溜息混じりに振り返り
捨て去る時には こうして出来るだけ
遠くへ投げ上げるものよ

君はスクランブル交差点斜めに渡り
乍ら不意に涙ぐんで
まるでこの町は青春達の姥捨山みたいだという
ねェほらそこにもここにも
かつて使い棄てられた愛が落ちてる
時の流れという名の鳩が舞い下りて
それをついばんでいる

喰べかけの夢を聖橋 から放る
各駅停車の檸檬色がそれをかみくだく
二人の波紋の拡がり数えたあと
小さな溜息混じりに振り返り
消え去る時には こうしてあっけなく
静かに堕ちてゆくものよ


12.加速度

作詞:さだまさし
作曲:渡辺俊幸

別れの電話は雨の日の午後
受話器の向うできみは確かに
雨にうたれ声もたてずに泣いていた
「最後のコインが今落ちたから
今迄のすべてがあと3分ね」って
きみはとぎれがちに 小さくつぶやいた

スローモーションで時が倒れてゆく
言葉さえ塞いで
ごらん愛の素顔は 2つの世界の
間で揺れる シーソーゲーム
喜びと……悲しみと……

最後の電話がコトリと切れて
静かに僕の手に残ったものは
発信音と穏やかな雨のさざめき
途絶える直前の君の優しさは
最後に ピリオド打たなかったこと
まるで悲鳴の様に 言いかけた「それから」って

自分の重みに耐え切れず落ちてゆく
ガラス窓のしずく
あたかも二人の加速度の様に
悲しみを集めて
ほらひとつ またひとつ